サラリーマンが納税額を節約する手段はあまりありません。
しかし各種税金(所得税、住民税、社会保険料)が決まるルールを理解すれば少ないながらも納税額を少なくすることができます。
本記事では働き方を工夫することで社会保険料を節約する方法を解説いたします。
なお本記事とは別に控除(ふるさと納税、個人年金への加入など)による節税の方法も書かせていただきましたので併せて読んでいただくことで更にお役に立てますと幸いです。
★こんな人達のお役に立ちます★
- 社会保険料が高くてなんとかできないかと考えている方
- 毎月の仕事量をある程度調整することが可能な方
- 残業代の出る会社にお勤めの方
サラリーマンでも、残業する月が調整できれば節約することができる
サラリーマンは給料や賞与から勝手に税金が天引きされるからできることなんてないのではないか?
自営業の人ならば確定申告の時に売上と経費を申告するからそれで納税額を調整できるけれど、サラリーマンはできることないのでは?
おっしゃる通りで、各種税金(所得税・住民税・社会保険料)はぞれぞれルールにに従って額が決まり給料や賞与から天引きされていきます。
ただしこれは残業する月(言い換えれば仕事量を来月に多くする調整が可能、など)を調整することができれば社会保険料の額を少なくすることが可能です。
しかし多くの方にとってそういう調整は難しいため、決してこの節約術のために無理な仕事をしないようにだけご注意くださいませ。
社会保険料の額の決定ルール
社会保険料とは何かというと、給料や賞与の明細に書かれている次の項目の総称です。
- 厚生年金保険料
- 健康保険
- 介護保険(40歳以上の方のみ)
- 雇用保険
それぞれ違ったルールで納税額が決定されますので、そのルールを確認してみましょう。
厚生年金保険料、健康保険、介護保険は標準報酬月額を元に計算される
厚生年金保険料、健康保険、介護保険は4~6月の給与額を元に出される標準報酬月額を元に計算され、同じ年の10月以降から適用されます。
次の手順でそれぞれ計算することができます。
- 4~6月の給料額+交通費の平均額を計算する
- 1の額を標準報酬月額を決める表(*1)と比較し、標準報酬月額を出す
- 厚生年金保険料=標準報酬月額x厚生年金保険料率(率は会社次第) ÷ 2
- 健康保険料=標準報酬月額x健康保険料率(率は会社次第) ÷ 2
- 介護保険料=標準報酬月額x介護保険料率(率は会社次第) ÷ 2
例えば例としてAさん(40歳)の給料が次の通りだとします。
金額 | 備考 | |
4月の給料 | 32万円 | 残業代:2万円 |
5月の給料 | 35万円 | 残業代:5万円 |
6月の給料 | 38万円 | 残業代:8万円 |
交通費 | 6万円(半年) | 3月と9月に半年分支給される |
このAさんの場合、厚生年金保険料・健康保険料・雇用保険料は次のように計算されていきます(Aさんの会社では雇用保険料率:18.3%、健康保険料:7.2%、介護保険料:3.0%とする)。
- 標準報酬月額:4~6月の給料額と交通費の平均額を足すと、『(32 + 35 + 38) ÷ 3 + (6 ÷ 6) = 36万円』
- 厚生年金保険料(10月以降):標準報酬月額の18.3%なので、『36万円 x 18.3% ÷ 2 = 32,930円』
- 健康保険料(10月以降):標準報酬月額の7.2%なので、『36万円 x 7.2% ÷ 2 = 12,960円』
- 介護保険料(10月以降):標準報酬月額の3.0%なので、『36万円 x 3.0% ÷ 2 = 5,400円』
雇用保険は額面の給与額を元に計算される
雇用保険料は給与額に0.3%を乗じることで計算されます。
先のAさんの例だと次の通りです。
支給額 | 雇用保険 | |
4月の給料 | 32万円 | 32万円 x 0.3% = 960円 |
5月の給料 | 35万円 | 35万円 x 0.3% = 1,050円 |
6月の給料 | 38万円 | 38万円 x 0.3% = 1,140円 |
交通費 | 6万円(半年) | 3月と9月の時に、給与とは別に180円 |
社会保険料を節約する方法
このルールを踏まえてどう社会保険料を安くするのか。
雇用保険料についてはやりようはないのですが、標準報酬月額は4~6月の支給額を調整することで安くすることができます。
社会保険料:10月以降の社会保険料を節約する
例えばAさんの例では6月に残業代が多く支給されているので5月の仕事量が多かったことになりますが、その仕事量を6月に回す調整ができるのであれば、6月の支給額を7月に回すことが可能となります。
次のような感じですね。
支給額(調整前) | 支給額(調整後) | |
4月の給料 | 32万円 | 32万円 |
5月の給料 | 35万円 | 35万円 |
6月の給料 | 38万円 | 30万円 |
これだけで各計算結果は次の通り変わります。
調整前 | 調整後 | |
4~6月の給料額+交通費の平均額 | 36万円 | 33.3万円 |
標準報酬月額 | 36万円 | 34万円 |
厚生年金保険料(10月以降) | 32,930円 | 31,110円 |
健康保険(10月以降) | 12,960円 | 12,240円 |
雇用保険(10月以降) | 5,400円 | 5,100円 |
10月以降の社会保険料(雇用保険を除く)は毎月2,840円、年間で34,080円下がるわけです。
年収を変えずに年間3.4万円程度下げることができるので、調整が問題なく行えるのであればやっておいた方が断然得でしょう。
おまけ:随時改定に注意しよう
ここまではよく知られている納税額を節約する手段なのですが、これをやるにあたって随時改定に注意する必要があります。
実は標準報酬月額を決めるルールには次の2通りあるのです。
- 定時決定:4~6月の支給額と交通費を元に計算し、同年10月以降に適用させるルール
- 随時改定:4~6月以外でも、2ヵ月連続して支給額が高い場合に随時適用させるルール
なのでよく「4~6月の残業代さえ抑えればあとは気にしなくていいんですよね」という勘違いがあるのですが、そんなことはないので解説します。
(てか私もそれで計画何回か狂わされました。)
定時決定は最初の方でルールを説明したので割愛します。
肝心の随時改定とは具体的にどんなルールなのか?
随時改定は、次の3つのすべてにあてはまる場合に、固定的賃金の変動があった月から4ヶ月目に改定が行われます。
全国健康保険協会より引用
- 昇(降)給などで、固定的賃金に変動があったとき
- 固定的賃金の変動月以後継続した3ヶ月の間に支払われた報酬の平均月額を標準報酬月額等級区分にあてはめ、現在の標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じたとき
- 3ヶ月とも報酬の支払基礎日数が17日以上あるとき
私自身も当初は4~6月の残業代にさえ気を付ければいいんでしょ?と思って7月以降に残業代が出るよう仕事を調整したことがあったのですが、ものの見事その数か月後に社会保険料が大幅にアップされてしまいました…。
まとめ
サラリーマンは正直税金を徴収されやすい立場にあるため、節税のためにできる手段は残念ながら限られています。
しかしそんな中でも、その税金の算出ルールを知ることで工夫の余地はまだまだあります。
社会保険料の節税というのはその中の一つですが、もしも実践できそうな職場であれば是非とも実践してみて下さい。
ただ、これのために無理な働き方をするのはおすすめしませんので、そこは自己責任で何卒よろしくお願いいたします…!