ここ20年間、日本では平均年収が下がり続ける一方で増税や値上げラッシュが活発で、多くの人にとってどんどん生活が苦しくなってきています。
そんな状況なのか資産運用が注目を浴びる様になってきた気がしますが、一方でSNSでは「つみたてNISAで資産運用さえすれば勝ち馬に乗ったも同然!」な声が目立つようになった気もします。
確かにつみたてNISAは資産運用を始めるには良い制度で貯金より有用と思いますが、問題はあなたの目標(いつまでに何したいか)です。
つみたてNISAは目標次第で良い手段になりますが、デメリットを理解していないと逆効果です。
本記事ではつみたてNISAのデメリットは何か?どういう目標ならつみたてNISAが最適なのか?を解説します。
★こんな方のお役に立ちます★
- つみたてNISAに興味がある
- つみたてNISAのデメリットを知りたい方
- つみたてNISAはどういう目的に合った投資なのかを知りたい方
つみたてNISAが資産運用として注目され出している
日本ではここ20年間、平均年収が下がり続け、尚且つ毎年何かしらの増税を受けて可処分所得が徐々に下がっております。
加えて2021年からはロシアとウクライナの戦争の影響を受けて生活インフラや様々な食費が暴騰し出し、泣きっ面に蜂という状況です。
こんな状況が続いているせいか、資産形成には労働&貯金と考えていた人達もこのままではまずいのでは?と疑問を抱く様になり、対策の1つとして資産運用に目を向ける方が増えてきたようです。
中でも投資信託の積立は初心者向けの資産運用であり、政府からも「つみたてNISA」という税制優遇を受けられる制度で投資信託の積立をする事が推奨されているほどです。
そんなこんなでつみたてNISAへの関心が高まり証券口座を開設する動きが増えている様で、個人的には良い傾向だと思っています。
制度を理解していないと期待外れな結果になりかねない
一方でSNSを見ると一部で「つみたてNISAさえすれば勝ち組!していないのは情弱!」と極端な発信をする方が目立つ様になった気がします。
制度に詳しくない状態でこの言葉を真に受けてはいけませんので、今一度基本のおさらいをしてみるとしましょう。
つみたてNISAのメリット
まず投資信託を積立で行うメリットは
- 毎月一定額の積立ができる(=貯金感覚で資産運用できる)
- ドルコスト平均法でプラスになりやすい(ただし長期投資が前提)
で、更にこれをつみたてNISAで行うメリットは以下の通りです。
- 利益に対し課税されない(通常は利益の20%分、課税される)
- 怪しい商品が除去されている(金融庁が除去してくれた)
基本怪しくない上に課税されることなく貯金感覚でできるという理由で、個人的には貯金好きな日本人にとって非常に相性の良い資産運用なのではないかと考えています。
しかしつみたてNISAはあくまで「初心者が無難にお金を増やしていく手段の1つ」でしかないため、「投資で大金を作りたい」というのには適しませんし売却のタイミングによっては結局課税されてしまうなど、あなたの期待通りの結果とならない場合があります。
本記事で挙げたいデメリットは以下の3つで、順を追って説明したいと思います。
- デメリット1:積立金額に上限がある⇒大金を作るのには向かない
- デメリット2:積立期間に制限がある⇒課税されるケースが出てくる
- デメリット3:元本保証はされない⇒銀行預金より悪い結果になる可能性もある
つみたてNISAはあくまで初心者が無難にお金を増やす手段の1つ。
これさえやっていれば将来は安泰というものではないし、制度を理解していないと期待外れな結果になりうるのでよく理解しておこう。
つみたてNISAのデメリット
デメリット1:積立金額に上限がある⇒大金を作るのには向かない
通常の口座(一般口座、特定口座)であれば年間の積立額に上限はありませんが、つみたてNISAだと年間40万円が限度となります。
年間40万円で20年間で形成できる金額は銀行預金ならば800万円なのに対し
- 利回り5%⇒1,370万円
- 利回り10%⇒2,500万円(相当な優良案件)
といったところですので、あなたの目標とする金額次第では物足りない投資方法になってしまいます。
(もちろん20年で上記金額を貯めるのが目的であれば最適な制度です)
そもそもつみたてNISAは無難に資産を増やせる一方で何千万もの大金を作るのに適した投資方法ではないため、是非ともご自身の目標を確認した上で本当につみたてNISAで良いのか?を判断していってほしいところです。
投資に回せるお金が年間40万円以上あり、尚且つもっと大きな金額を形成したい場合はつみたてNISAだけでは達成できないので、
- 夫婦でつみたてNISA
- つみたてNISA+別の資産運用
- つみたてNISA以外の資産運用
をした方が目的を達成しやすくて良いでしょう。
つみたてNISAは無難に増やすことはできるが大きく増やすことはできない。
目標とする金額次第ではリスクと相談の上でつみたてNISA以外の手段も検討するか、つみたてNISAと組み合わせた方が良い。
デメリット2:積立期間に制限がある⇒課税されるケースが出てくる
つみたてNISAは積立期間が最大20年の上、投資できる期間が2042年までです。
なので例えば現在20歳の若い方が老後までつみたてNISAを続けることはできませんし、10年後に初めても12年間しか資産運用できません。
厳密には上限期間を超えると、売却するか段階的に通常の口座に移すかを選択することとなり、後者の場合は課税される可能性が出てきます。
例えば2020年に積み立てた40万円は2040年に80万円に増えた状態で通常口座にうつし、その後100万円に増えたタイミングで売却すれば20万円利益が出たものとして扱われ、20万円の約20%の4万円が課税となります。
また滅多にないですが同じケースで2040年に20万円に減った状態で通常口座に移され、その後30万円に増えたタイミングで売却すると10万円利益がでたものとして扱われ、10万円の約20%の2万円が課税となるなど、損した上に課税されることもありえます…滅多にないですが。
まあそれでも普通に投資信託するよりは基本有利(課税額も少なくなる)のですが、有利にならない場合もありますし、非課税に魅力を感じていた人にとっては思わぬ課税で「えー」ってならないよう認識しておきましょう。
つみたてNISAならば課税されない!と勘違いしていると思わぬ課税でがっかりすることになります。
20年以上資産運用する場合(20~30代の若い方が老後資金を作る、など)では課税される可能性が高いことも覚悟しておきましょう。
(特に老後まで非課税の恩恵を受けたい場合はつみたてNISAよりもiDecoの方が税制面では優遇されますのでそちらも確認すべきでしょう)。
デメリット3:元本保証はされない⇒銀行預金より悪い結果になる可能性もある
最後にそもそもの話としてつみたてNISAはあくまで資産運用ですので、元本が保証されるものではありません。
なので新型コロっとしたウィルスのような大暴落が発生すれば銀行預金していたより資産が貯まらなかったという結果になることは十分にありえます。
例えば(極端ですが)日経平均に連動するインデックス型の商品に投資していたとして、1991年につみたてを開始した人は2011年時点では大分損していることになります。
基本20年以上投資し続けていれば損はしにくいものですが、常に右肩上がりで株価が上がり続けるような商品などこの世にはありませんので、こういうケースも最悪起こりうることは覚悟しておきましょう。
つみたてNISAは必ず増える!という前提で始めている方も多いと思いますが、あくまで元本保証のない資産運用であることを忘れないでください。
(それでも投資期間が長ければ銀行預金よりは基本有利にはなりますが、タイミングが悪いと元本割れもありえるので、その覚悟だけはもっておくべきです)
つみたてNISAの制度とあなたの目的を再確認しよう
- 大きな資産を形成したい
- 若い内から老後資金を形成したい
というような目的を持っている場合、つみたてNISAでは思うような結果を得られない&思わぬ課税をくらう場合がある話をさせていただきました。
勿論そういう目的でつみたてNISAをすること自体は大きく間違っていませんが、制度を知った上でつみたてNISAをやっているのと知らずに楽観的にやっているのとでは、結果が出た時の感想も大きく違ってくるので注意すべきでしょう。
ちなみに参考までに、私はつみたてNISAを
- 将来産まれる子供の教育費用(大学進学以降)※約20年後に売却予定
- 老後資金の一部 ※約30年後に段階的に売却予定
にするために実施しています。
①は運が良ければ必要なタイミングで非課税のまま売却ができるかも知れませんし(子供はまだですが、そろそろと考えてはいるので)、②は30年以上運用する上に段階的に売却していくのでほぼ確実に課税されますが、それを承知で(それでも銀行預金よりは良い)やっている、という具合です。
自分の運用が正しいなんて思っていませんしもっと良いやり方もあるとは思いますが、制度のメリットデメリットを踏まえ、こういう目的で運用しているのだという参考になってくれれば幸いです。
まとめ
特に今年つみたてNISAを開始した方はメリットを聞いて始めた方が多いと思いますが、そんな方々が将来残念な思いをしないよう、どういう落とし穴があるのかという観点で記事を書かせていただきました。
非課税で資産形成ができる!というメリットに魅力を感じて始めた方は今一度、
- デメリット1:積立金額に上限がある⇒大金を作るのには向かない
- デメリット2:積立期間に制限がある⇒課税されるケースが出てくる
- デメリット3:元本保証はされない⇒銀行預金より悪い結果になる可能性もある
といったデメリットがあることと、そもそもあなたは何年でいくら形成したいのですか?を再確認してみて下さい。
その上で、「このままつみたてNISAを続けるので良いのか?」を自問自答してみて下さい。
自問自答の結果、つみたてNISAで良いんだ!となれば素晴らしいですし、「やはり別の手段の方が…」という気付きになってくれれば記事を書いた者としては本望です。